No.42  世界のSRTテクニック(10)

2018年、Wooden Hand は日本、ドイツ、ニュージーランド、イギリス、アメリカのクライマー達10人のSRTを紹介した小冊子を出版しました。​これから毎月彼らを一人ずつこのページで紹介していこうと思います。

‘TANGLES’ (絡み) by ケビン ビンガム(USA)

ケビン曰く

 

『僕が職業としてクライミングを始めて以来、いくつかの事を伸ばしてきました。その1つが始めたころに比べて絡んだ糸やロープを解いている時間がずいぶん短くなった事です。今でもかなりの時間をロープ解きに使っているのですが、楽になってさほどイライラしません。むしろロープ解きをパズルのように楽しむ事さえできるようになりました。ロープ解きのコツは、ループになって挟まった部分を探してそこをはずしてやる事です。ロープをはがしてやるのです。ロープ解きはほとんどこの1つのコツだけでやっています。ロープ解きは僕たちの職業に無くてはならない技術の1つです。その良し悪しが樹上アクセス、ルート探し、樹冠移動、必要な道具の取り出しと収納の手際良さに直接関わってきます。ルート探しはロープの絡みをいかに防ぐかということに直結します。ロープの絡みはクライミングにとって最大の障害になります。ロープの流れをスッキリと真っ直ぐに保つのはパズルのようなものです。クライミングロープ1本だけでも十分難しいところにリギングロープ、タグライン、スピードラインと加えていく事により益々複雑になります。』

『かつてクライマーの見習いだった頃、僕は樫の木のケーブリングを任されました。チェーンソーを使わない極めて簡単な仕事でした。その時初めて2カ所にアンカーを取って、なおかつ非常に長いケーブルを扱う事になったのですが、2本のクライミングロープとケーブルが絡まって全く身動きが取れなくなってしまい、もう1人のクライマーに登ってきてもらって助けてもらいながら何とか脱出できたのです。その経験によってロープの絡みに対処する方法を真剣に調べるようになったのです。SRTの優れた点の1つは絡みを避けやすい事です。これから始める作業の段取りを考える時、必要になるロープの長さをピッタリと割り出すことに大きな楽しみを感じます。DdRTでは登る木の高低に関わらず、手持ちのロープを全部引きずって登らなければなりません。高さ10mの木に60mのロープで登るのはとんでもない苦労です。DdRTで登って行くと下がっていくロープエンドが下に伸びた枝、地上に落とされた枝、庭園に置かれたガラス製の像・・・などに絡みついていくのです。木のうしろ側や地面に伸びた長いロープエンドをいかに絡ませないかと悩んできた長い年月の後で、ロープエンドを必要な長さに調整したSRTでのクライミングは何て楽しいんだろうと思うのです。』

『’絡み’は不思議なカオス理論です。読めない複雑さ、ロープの性質、そして避けられない結果があります。絡みに対処する基本ルールは、怒らない、イライラしない事です。焦れば焦るほど絡みは締まって固くなってしまいます。絡みには忍耐強く優しく接していかなければなりません。ロープが絡むという性質は裏を返せばそれだけ素晴らしく強力な道具なのだという事を理解することが大事なのです。