No21 SRTアンカー (SRTバンザイ)
SRTアンカーはアクセス、ワークポジショニング、トラバースの全てに関連していて戦略的です。
SRTクライマーはDdRTクライマーと比べ使う器具が少なくて済みます。
なぜならばSRTではクライミングロープがアンカーの一部になるからです。
アンカーのあるものはカラビナも使いますが、それはクライマーがアンカーの近くにいる時だけで、クライマーがアンカーから離れる場合にはノットだけで作った方がより安全です。
離れた場所から回収できるものもあれば、できないものもあります。
DdRTアンカーの方がシンプルですが用途は限られます。
SRTアンカーはより複雑ですがもっと自由になれます。
SRTバンザイ!
SRTクライマーはSRTロープの使い方を追求しようと日々探求しています。
一本のSRTロープは多くの使い方ができ、より安全なクライミングとワークポジショニングをクライマーに与えてくれます。
下図の緑と青の線は赤い線がそこまで行き着く可能性を表しています。
1 トランクアンカー
2 ナチュラルクロッチを使った荷重分散
3 ワーキングアンカー
4&4a 一時的なアンカーを使ったトラバースライン
5&6 荷重移動しているリダイレクト
7 回収可能なリダイレクト
安全なアンカー設置のために必要な知識、考慮すること
ノット - 「ノットには半分正しいということはない。正しいか全く間違っているかだ。」クリフォード.アシュレイ
使うノット:
ダブルループ ランニングボーライン アルパインバタフライ スキャッフォールドノット ツェッペリンベンド ヨーロピアンデスノット ダブルフィッシャーマン
器 具:
アンカーリング 34mm と 40mm
トリプルロックカラビナはクライマーの目の届く場所で使う分には十分安全である。
それでは4段オートロックがあればアンカーから離れても十分安全か?
それよりカラビナを使わない方がいいのでは?と考えるわけです。
場 所:
幹の根元 幹の上部 樹冠
木の種類:
木の太さと樹皮の質感=摩擦の大きさ
設 置:
新しいアンカーシステムを考える時には設置には一定のルールに従う必要があります。
カラビナには横の荷重を絶対に掛けない
ツリークライマーはアンカーに体重を掛けたり外したりします。ということはアンカーが動くわけです。アンカーは 動いても危険な荷重が掛かったり緩んでしまってはいけません。
アンカーはクライマーの視界内に常にあるわけではない。
クライマーからの評価が高く、強度がきちんと表示された器具を使いましょう。
戦 略:
仕事の内容や木の種類によって異なる結び方があります。クライマーが今どこにいて、どこに行きたいかによってどのアンカーを使うかを決めます。木の形態や健康状態によっても変わってきます。
リスクアセスメント:
クライミングのリスクアセスメントはアクセスとワークポジショニングで大きく2つに分けられます。
アクセスは主にワーキング用アンカーポイントを得るまでの最初の垂直上昇のことを指します。
アクセスラインは仕事の邪魔になってはいけません。ですからワークポジショニング用トランクアンカーシステムはそこまで考えて設置しなければなりません。
各種アンカー
トランクアンカーシステム
幹の根元にアンカーを結ぶことはSRTクライマーに様々な利点をもたらします。
ロープを1本の枝に独立して掛ける必要がないので設置が非常に楽になることです。
木の上に器具を付けていないため回収も簡単です。
しかし欠点もあります。ロープが何本かの枝を通ってくると目で見えにくくなり、注意しないと作業ゾーンを通ってしまっていることもあります。
ロープが幹にしっかり締められていること、作業ゾーンからしっかり離れていることを確認してからトランクゾーンを設置してください
ワーキングエンド トランクアンカー
バージョン1
使用するもの
スキャッフォールドノット - DMM ダブルアクションカラビナ
設置方法
ワーキングエンドをスキャッフォールドノットでアンカーリングに縛る。
ロープを幹に一周させてからバイトにしてリングに通しそこにカラビナを掛ける。
注意点
ロープをたるみなくしっかり張ること。細くて樹皮が滑りやすい木にはロープを2巻きする。
バージョン2
使用するもの
ダブルループ ランニングボーライン
設置方法
ロープを幹に一周させてからダブルループ ランニングボーラインで締めつける。
注意点
ロープをたるみなくしっかり張ること。細くて樹皮が滑りやすい木にはロープを2巻きする。
ミッドライン トランクアンカー(ロープの中間に作るアンカー)
バージョン1
使用するもの
40mm アンカーリング - ミッドライン ガースヒッチ - シネット(デイジー)チェーン+ハーフヒッチ - トリプルロックカラビナ
方法
リングをガースヒッチで固定し、ロープを幹に一周させてからリングにシネットチェーンで縛りエンドをハーフヒッチとカラビナで止めて抜け防止をする。
注意点
ロープをたるみなくしっかり張ること。細くて樹皮が滑りやすい木にはロープを2巻きする。
こちらが結び方
クラウンアンカーシステム(樹冠に作るアンカー)
バージョン1
使用するもの
ダブルループ ランニングボーライン
設置方法
ワーキングエンドを枝に回しダブルループ ランニングボーラインで縛る。
注意点
このノットは荷重が掛かっていないときは簡単に開いてループが滑り落ちるので、枝又でない場所では2巻きにして滑り落ちるのを防ぐこと。ノットからテイルを2mほど垂らしておけばアンカーまで登り直さずに回収できる。
バージョン2
使用するもの
アルパインバタフライ
設置方法
ワーキングエンドを枝に回してからスタンディングエンド側にアルパインバタフライノットを縛り、ワーキングエンドをそこに通す。
注意点
このノットは荷重が掛かっていないときは簡単に開いてループが滑り落ちるので、枝又でない場所では2巻きにして滑り落ちるのを防ぐこと。
バージョン3
使用するもの
アルパインバタフライ、ピントプーリー、トリプルロック カラビナ
設置方法
ワーキングエンドを枝に回してからスタンディングエンド側にアルパインバタフライノットを縛り写真のようにピントプーリーをカラビナで取り付ける。
注意点
このノットは荷重が掛かっていないときは簡単に開いてループが滑り落ちるので、枝又でない場所では2巻きにして滑り落ちるのを防ぐこと。カラビナはノーズ(ゲートが開く側)を下向きでゲートを外向きに取り付けること。(木の表面やロープに当たってゲートが開くのを防ぐため。)
ハイ トランクアンカーシステム
バージョン1
使用するもの
34mm アンカーリング、トリプルロックカラビナ2個、スキャッフォールドノットまたはスプライス
設置方法
ロープをリングにスキャッフォールドノットで縛る。ロープをバイトにしてリングに通し反対向きにしたカラビナ2個をそこに掛けてロープを引いて締め込む。
注意点
どちらのカラビナもノーズを下向きにする。ノーズが上向きだとゲートが開く可能性が高くなる。バイトを後ろから入れた方が自然に感じるだろうが、これだと回収のためロープを下に引いた時にリングがロープに押し付けられて引き出せなくなってしまう。ロープエンドをカラビナに縛っておくとアンカーを下から回収できる。
バージョン2
使用するもの
アルパインバタフライ、ピントプーリー、トリプルロックカラビナ
設置方法
ワーキングエンドを枝に回してからスタンディングエンド側にアルパインバタフライノットを縛り写真のようにピントプーリーをカラビナで取り付ける。
注意点
このノットは荷重が掛かっていないときは簡単に開いてループが滑り落ちるので、枝又でない場所では2巻きにして滑り落ちるのを防ぐこと。カラビナはノーズ(ゲートが開く側)を下向きでゲートを外向きに取り付けること。(木の表面やロープに当たってゲートが開くのを防ぐため。)
バージョン3
使用するもの
ダブルループ ランニングボーライン
設置方法
ワーキングエンドを枝に回しダブルループ ランニングボーラインで縛る。
注意点
このノットは荷重が掛かっていないときは簡単に開いてループが滑り落ちるので、枝又でない場所では2巻きにして滑り落ちるのを防ぐこと。ノットからテイルを2mほど垂らしておけばアンカーまで登り直さずに回収できる。
バージョン4
使用するもの
アルパインバタフライ
設置方法
ワーキングエンドを枝に回してからスタンディングエンド側にアルパインバタフライノットを縛り、ワーキングエンドをそこに通す。
注意点
このノットは荷重が掛かっていないときは簡単に開いてループが滑り落ちるので、枝又でない場所では2巻きにして滑り落ちるのを防ぐこと。
2本のロープの連結
段取り時の判断ミスからロープの長さが足りなくなる場合があります。そんな時はロープを継ぎ足せばリスクを回避できます。下記の3つの連結方法できちんと縛れば安全です。
1 ダブルフィッシャーマン
ダブルフィッシャーマンは一番解けにくいノットですが、解く時にマーリンスパイクが必要なほどしっかり締まります。
2 ヨーロピアン デスノット
ヨーロピアン デスノットまたはEDK。見た目が簡単すぎてこの名前が付いていますが、ロープエンドを長めに(80cmほど)出せば十分に安全です。ノットが小さくなるので枝又が通りやすくなります。
3 ツェッペリンベンド
ツェッペリンベンドもノットが小さくなります。安全のためロープエンドは最低60cmほど出しておきます。