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No.44 アクセスライン

 

キーワード:アクセス, アクセスライン, SRS (ステーショナリー=静止 ロープ システム), MRS (ムービング=可動 ロープ システム), ボトムアンカー, トップアンカー, アクセスアンカー, ワーキングアンカー, レスキュー, アンカーレッグ, 伸び, 組み合わせ, ユニセンダー,

 

 

 僕はクライミングの工程をアクセス、ワーク、回収の3つに分けて考えています。そしてそれぞれの内容は日によって随分変わります。アクセスの方法にはクライミングスパーを使う上り方、ロープを使う上り方、または足場を組んだ上り方といった選択があります。またクライミングスパーのクライミングだけを見ても、ランヤード1本を使った上り方、2本使った上り方、ランヤード及び上から吊ったロープにベーシックなシステムを使った上り方、ベーシックと先進的システムの組み合わせを使った上り方があり、ロープ使用でもクレーンで吊るやり方、スローラインでトップアンカーをセットするやり方と非常に多様です。これらの事を頭の中にしっかり描ければ、各現場で目的に合った適切な方法を選び出すことが可能になります。アクセスとは単に上る行為ではなく上で作業するためのアンカーを設置する事まで含まれます。

 

 アンカーは安全性を第一に考慮してトップアンカーにするかボトムアンカーにするかをクライマー自身が決定します。

 

 ボトムアンカーとSRS (SRT)を選択した場合、アンカーレッグ (ロープの折り返し点からボトムアンカーまでの部分) を切断する危険性があります。そのため途中の邪魔な枝を切るのも最小限に抑え、チェーンソーは地上に残してハンドソーで、そして大抵の場合ランヤードなどでバックアップを取るという配慮が必要です。ボトムアンカーも荷重の掛かり方、落下物に当たる可能性、グランドワーカーとの関係を考慮して設置します。それによって安全性が大きく違ってきます。クライマーがカッティングツールを使用する際には、もっと言えば持ち運んでいる時でさえ十分警戒しなければなりません。僕はアクセスの際にはできるだけチェーンソーを地上に残して上った後に引き上げています。

 

 レスキューまで考慮して仕事の段取りをしなければ良いチームとは言えません。そこまでしてようやくプロと言えます。そして個人個人のロープワーク技術の良し悪しがチームの実力に反映されます。

 

 アーボリカルチャーはロープ高所作業の中で唯一離れた場所からのアンカー設置が必要になります。その困難性と危険性そして時間が掛かるという事を理解しなければなりません。言うまでもなく設置されたアクセスラインにはレスキューへの対応がされているべきです。それはチームにとって『ナイロン ハイウェイ』となりチームプレーの質を高め、生産性と安全性も飛躍するでしょう。

 

 アクセスラインは単にレスキューのためだけのものではありませんし、レスキューラインと言い切ってしまうのは不適切です。アクセスラインはどのような条件のアクセスでもこなせる様にセットしなければなりません。アクセスとワーキングの具体的なイメージを持つべきです。そうすればアクセスで使うロープや器具を分けて、アクセスとワークを混同しないようようにできるでしょう。

 

  10mm、10.5mmの細さでも伸びの少ないロープがいくつかあります。大抵の場合60mのロープはボトムアンカーを作るのに十分な長さです。細いロープはそれだけ全体の重さが軽量で樹間を引き回すのが楽になります。 

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赤いロープがアクセスラインです。アンカーレッグがクライマーの上る線に重なるため、カッティングは出来るだけ少な目におさえ、切るときは必ずランヤード等でバックアップを取ります。チェーンソーにはカバーを付けるか地面に置いていきます。アンカーレッグは真上から刃物が落ちない場所に設置します。なおかつロープがそのような場所を横切らないようにしなければなりません。ロープは幹の根元にダブルループ ランニングボーラインで縛り付け、そこから1m程上部にアルパインバタフライノットを作ってレスキューに備えておきます。器具はロープのタイプや太さに適合したものを使用し、安全性が確認されたクライミング方法を守ります。歯の付いたカムを使った器具は必ずバックアップの器具をもう1つロープに取り付けます。このタイプは葉などが挟まるとロープを滑ってしまうからです。

青いロープはワーキングラインで、クライマーが持って行って上に着いてからトップアンカーで取り付けます。これでアクセスラインはフリーになるため次のクライマーがこれを使うことができます。

 

『基本的なリスクアセスメントとクライミング方法は生きていて変化に富む木に上るには不可欠です。それ無しのクライミングは無謀と言えるでしょう。』

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アクセスロープについて

ロープに掛けられる荷重は破断荷重 (MBS) の10%までとします。ロープメーカーによってMBSの測定法が違いますが、目安にはなります。伸び率 2% 以下のロープは非常にスタティックであるため衝撃を掛けないよう最新の注意を払わなければなりません。3.5% 以上のロープは逆に伸び過ぎて上る効率が悪くなります。

Liros トーピードのコアはダイニーマ製で伸びが殆どゼロであるため、脚力が全て上昇する力に変換して効率の良い上りができます。しかし伸び率 1% 以下のためクライミングロープのヨーロッパ基準EN1891を満たしていません。そのためショックアブソーバーの併用が必要になります。加えてダイニーマのコアが非常に滑りやすいため歯付きカムの器具を使うのは安全ではありません。衝撃が掛かってカバーが引き裂かれるとコアを滑り落ちて墜落するからです。

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ユニセンダー

ロックエキゾチカ のユニセンダーはSRSとMRS両方で使えるようデザインされています。ユニセンダーは滑らかなカムで構成され、軽量でロープ途中への着脱も簡単です。仕様には使用可能ロープ径が11mmから13mmと書かれていますが、実際には10mmから10.5mmロープでも安全に使用する事が出来ます (ロックエキゾチカの保証はありませんが)。 ユニセンダーはメカニカルデバイスの中では珍しく許容範囲の広い器具と言えます。これをハーネスに取り付ければ非常に幅広い用途に対応してくれるはずです。

 

 

 

1.  ユニセンダーを体から離れた場所に取り付けるといくつかの面白いテクニックが使えるようになります。通常はユニセンダーを直接ブリッジのリングに取り付けて、ロープのたるみを上っていく毎に取っていくやり方です。下から流れ出すロープを上に持ち上げてたるみを取ります。ユニセンダーをテザーを使って体から離して取り付けると自然に引き上げる事が出来ます。先の方法との違いは、わざわざ重いロープのスタンディングエンドを持ち上げずに済むことです。

 

 

 

2.  テザーを使用すればチェストハーネスに付けたカラビナをユニセンダーのすぐ下でロープに掛けられます。クライマーの体はロープの流れに沿って垂直になり、ロープロケットを併用する事で体の負担を少なくしたクライミングができるのです。ユニセンダーは手で持ち上げることもできるし、手を使わなくてもカラビナが下から持ち上げてくれます。

 

 

 

3.  ペツル のロールクリップを付け加えればユニセンダーをトラバースシステムとして使うこともできます。

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SRT器具一覧表(こちらから)

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