No.54 2ロープ デモンストレーション
僕は2020年から2ロープシステムの探求を始めましたが、後にこれが僕にとってこれほど重要になるとは想像していませんでした。
それができたのは僕をずっと推し続けてくれたKさんのおかげです。
始めた当初、新しく重要に思える疑問がいくつか思い浮かびました。
どのような用語を使えばいいか?
第2システムは最初のシステムのバックアップとして控えめに機能させるべきか?
それとも、もっと積極的に最初のシステムと連携させて使った方がいいか?
MRS、SRSどちらを使えば最適に機能するか?
アンカーはどうすればいいか?
別々にアンカーをとった方がいいか?
ロープ回収時の摩擦をどう管理するか?
どのようなデバイスの組み合わせが一番効果的に使えるか?
この期間に先立ち、僕は1本のロープをアクセスにもワークにも使えるように系統的かつ安全にアンカーを取る方法を真剣に考え、そのアイデアを積極的に使っていこうと決めました。
最初から、僕の2ロープシステムへの取り組みは一般的高所作業で使われるような控えめなバックアップシステムの導入でないことは明らかでした。
第2のロープがより良いワークポジショニングを作るのに役立つということは明白でした。
通常、第2システムは長いランヤードのように機能し、短いMRSとして必要に応じて取り付けたり回収したりします。
これを再考し、クライミング開始時に両方のロープを中央に戻し、そのうちの少なくとも1本をリダイレクトシステムとして使用することにしました。
クライマーは移動しようとしている場所付近にロープを投げ、それを使って振り子にならずに行き来することができます。
これをとりあえず「ポジショニングロープ」と呼び、短いMRSのように必要に応じて使いました。
「ポジショニングロープ」はすぐに使えることが分かったので、次は2つのデバイスを一緒に使う方法を模索し始めました。
ブリッジへの接続方法、デバイス2個を使った登り方、降り方、簡単なリダイレクト方法などを考え始めました。
時代遅れだと思っていたユニセンダーが、軽量でミッドライン取り付け可能な器具として再登場しました。
ユニセンダーはもともと(2006年頃)長さ調整可能なテザーを取り付けて、ハンドアッセンダーとして使われていました。
これを使用すると、2つのユニセンダーはお互いに干渉せず、かなり複雑な問題に対するシンプルな解決策となりました。
パズルの最後のピースは、2つのキャノピーアンカーシステムを機能的にまとめる方法でしたが、「アメリカン・クラッカー」はその探究の中から生まれました。
2021年には、ODSKでレベル3のワークショップを開始しました。
受講生は異なる木々でのロープシステムを計画するための系統的な技術を紹介され、2本のラインを使ったクライミングのための解決策を考えます。
Wooden Hand の2ロープワークショップはこのアイデアをさらに深め、デバイスの使用と2本のロープのクライミングおよびアンカリング技術に焦点を当てています。
この優れた2ロープシステムを広めたいと、2ロープワークショップのデモンストレーションプログラムを考えて、日本国内および世界中のさまざまな場所を訪れ始めました。
1月には横浜、5月には松本、スコットランド、オックスフォード(イギリス)、6月にはストックホルム(スウェーデン)を訪れました。
年間を通じて他の場所も予定しています。詳細は Wooden Hand ホームページをご確認ください。
デモンストレーションには、木をスケッチすることで、その特徴を掴み取る訓練が含まれています。
木の本当の形状、強さ、弱点をよく理解することで、ロープ作業の的確な段取ができるようになります。
クライマーには「動的」なクライミングの解決策と「静的」なリギングの解決策を考えてもらいます。
「効率マトリックス」について説明し、これを使用して以前の作業を反映させ、今後の正しい解決策の選択を助けるツールとして使います。
ノットブロックとアメリカン・クラッカーを紹介します。
クライミングとアンカー回収、リセット後再びクライミングという流れをデモンストレーションします。
クライミングが動的なものだけではなく、ロープ設置のデザインが重要であることを示唆します。
不安定な振り子状態の中でバランスを取るのではなく、ロープの設置方法によって体を安定させることを選びます。
最後には質問と回答のセッションで締めくくります。
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木のスケッチ
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クライミングとリギング解決策の設計
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効率マトリックス
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アメリカン・クラッカー
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2ロープクライミングデモンストレーション(2回)
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質問と回答
クライマーたちの雰囲気と会話の内容には各会場で違いがありました。
振り子の対処法がイギリスでは法律で明確に定められており、現在のクライミングシステムではうまく対処されていないことが指摘されました。
クライマーは振り子の中で動きながらバランスを取りますが、常に滑るリスクがあります。2ロープシステムはこの重要な問題を解決してくれます。
イギリスのクライマーは2本のラインを使用しなくてはならないのですが、残念ながら技術的なガイダンスは「バックアップ」システムの使用で終わっています。
彼らは第2のシステムをバックアップとして取り付けますが、振り子に対応するためには使用されません。
クライマーの話を聞くと、法律に従っているのは10%にも満たないようです。
最も一般的な不満は、ロープに発生する摩擦の対応が大変だということです。
イギリスの技術教育が、今まで通りの問題を抱えた2つのアンカー使用を過信せず、ロープを地上からスローラインで設置し1ヶ所のアンカーをより機能的に使う方法にもっと焦点を当てるようになってくれることを望みます。
イギリスのシーンは停滞しており、積極的な雰囲気よりも不満の方が多いと感じます。
日本では、すべてのグループまたは組織が自由に1つの方法を模索し共有できるようになればいいと思います。
複雑なロープ作業に対応できる複数の解決策が法律で認められるようになるべきです。
2ロープシステムを実施するには、基本的に1つのアンカーが十分に堅牢であることが求められます。
技術教育はその見極めを出来るようにする事から始めるべきだと思います。
第1ラインでクライマーの安全を確保した上で、第2ラインが移動する際の安全性もしっかり確保できるということを強調するべきです。